平成18年度生徒理科発表(地学)
馬門石はなぜ赤い
宇土高校 地学部



●研究の動機
1. 宇土高校の敷地内を通っている上水道の石管は凝灰岩(馬門石)でできていて、普通の凝灰岩の色に比べ大変赤いことに驚き興味を持ったから。
2. 馬門石が遠く離れた近畿地方の豪族の墓に使われていたことが、最近の宇土にとってビッグニュースだったから。
3. なぜ馬門地区の石だけがあんなに赤いのか原因を追求したくなったから。


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●馬門石とは
 熊本県中央部に位置する宇土半島の北岸、住吉地区から県道を南に2kmほど入ったところに馬門地区がある。ここで採掘される「馬門石」と呼ばれる石材は、いわゆる※「阿蘇W」に分類される凝灰岩ということになっている。しかし他の石と違いこの地区の石だけが赤みを帯びている。そこで、考古学の世界では阿蘇ピンク石と呼ばれたりする。宇土高校の近くでは、轟水源の上水道の石管(江戸時代のもので校内にも一部が残っている)や石橋の石材として利用されてきた。最近、稚内地方の豪族の墓に石棺として使われていたことが判明した。昨年、「大王の棺」を海路大阪まで運搬するプロジェクトが計画され、大成功に終わったことはまだ記憶に新しい。

※阿蘇Wとは?
 古い阿蘇山から四度にわたり噴出した阿蘇火砕流の中で最も新しいものである。熊本に分布している火砕流堆積物(火砕物)はほとんどがこれである。阿蘇の火砕物は、岩片や火山ガラスをよく含むが、Wの特徴は阿蘇火砕流の中で唯一角閃石を含んでいる点である。

地域の阿蘇Wと馬門石の肉眼での比較
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●研究の概要
今年度は地上の調査とともに、赤く発色する原因が酸化によるものではないかと予想、いわゆる「馬門石」と他の凝灰岩を資料にして酸化・還元の比較実験などを主にやってみた。資料の岩石は岩石片のままのものと、粉末にしたものの2種類についてそれぞれガスバーナーを用いて行った。今回はその結果について報告する。


●実験方法1. 酸化(岩石片を焼く)
 ※すべての実験において赤は馬門地区の赤い凝灰岩、白は馬門地区の白い凝灰岩、黒は網引地区(馬門の南)の阿蘇W凝灰岩、中間は馬門地区の淡桜色の凝灰岩を表している。
 赤色・白色・黒色・中間色の岩石片を5分・10分・30分に分けて三脚と三角架を用いてバーナーで直接焼いた。
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結果: 白い凝灰岩は加熱すると赤くなる傾向にあり、赤は黒ずみ、黒は退色したような色になることが分かった。


●実験方法2. 酸化(岩石粉を焼く)
 赤色・白色・中間色の岩石片を磁器の乳鉢ですり潰し、正確に1g量ってステンレス製の皿に入れガスバーナーで10分・20分・30分に分けて加熱し酸化させた。
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結果: 赤と中間の凝灰岩は赤みがかる傾向にあり、白ははじめ赤くなったが加熱するにつれ、色が戻る傾向にあることが分かった。


●実験方法3. 酸化(炭による還元)
 岩石片と炭をるつぼに入れて10分・20分・30分に分けて過熱し還元させた。岩石片を炭と接触させた場合と、炭と隔離させた場合に分けて実験した。

○還元(炭と白色の凝灰岩を接触)
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結果: 表の結果から炭と接しているほうの面が黒くなる傾向にあることが分かる。つまりこの場合は接触部分に炭が付着して色の判別が出来ず、失敗なので30分の実験のみを行った。
   
○還元(炭と白色の凝灰岩を隔離)
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結果: 色が濃くなるという変化が見られたが、これは木炭から出たタールが付着し炭化したからだと思われる。(還元の実験はうまくいかなかったと思う)


●その他の実験 過酸化水素水との反応を調べる
 岩石片1gに過酸化水素水(約35%)1mlを加えて反応を調べる。
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結果: 馬門地区の凝灰岩(赤と白)は激しい反応を示したが、網引地区の凝灰岩(黒)は静かな反応だった。


●まとめ
1. 参加の実験の場合には、はっきりした変化が見られたが、還元の実験の場合には、炭から出たタールの影響で判別不可能になり、失敗だと分かった。
2. 過酸化水素水との反応では、他の地区から採れた黒い凝灰岩だけ反応が違っていたので、何らかの違いが考えられる。
3. 馬門地区の凝灰岩が赤い理由をはっきりさせることは、現時点では出来なかったが、参加の実験の結果から酸化にやはり関係があるのではないかと考えられる。


●これからの課題
1. 凝灰岩、特に馬門石の還元方法を工夫してみる。(例えばエタノールを用いるなど)
2. 馬門石の分布と産状を確認する。
3. 天草陶石(木目石)を窯で焼くと赤くなるとの情報から、黒以外の凝灰岩を窯で焼いてみる。


●参考文献
1. 渡辺一徳・高木恭二 (1989) 熊本大学教養学部紀要 自然科学第38号 (29.38)
2. 宇土馬門石歴史散歩 馬門石ガイドマップ 発行:宇土市教育委員会 (2005.3)
3. 熊本県地質巡検ガイドマップ
4. 高本省吾 (1995) 宇土半島の火山の教材化に関する基礎研究平成7年度科学教育研究生研究報告


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