審査講評
熊本大学教育学部教授 正元 和盛
今年度も数多くのすばらしい科学研究物がみられました。その7200点余の中から、栄えある賞を受賞された皆様おめでとうございます。審査に携わった13名の委員の意見をもとに、今年度の審査講評をいたします。
小学校の部1〜4年では、生活に密着した身近なテーマで、長期間継続して調べている作品が多く、子どもたちの研究への意欲の高まりが感じられました。テーマのための調べる項目選びに、努力の跡が感じられ、継続した観察や実験の資料も多く、よく整えられて見やすく工夫されている作品が多くありました。周りの人の支援のあり方には、子どもの理解を伴う手法の選択や発達段階に応じた手法の選択などの配慮が必要です。
小学校の部5〜6年では、身近な自然や現象への素朴な疑問などをきっかけに行われた研究が多く、豊富なデータに裏打ちされている点などは大変よいと思います。また、図表などを用いた結果の提示の仕方もよくなってきています。継続した研究、全員で協力して多面的に調べた研究などが高い評価を得ました。さらに、研究目的に見合う方法をしっかり計画する、測定条件を明確にしてその測定で何が測れたのかを、結果の明確なデータに絞り簡潔に表現する、などの改善も望まれます。
中学校の部では、日常生活での素朴な疑問を探究し、身近な環境や事象を見つめたものが多く、表現方法もそれぞれに工夫があり資料も揃っていてよくまとめられていました。継続的な研究には、内容の発展や資料の更なる充実が見られました。方法が定形化している対象については、条件制御、データの的確性などが求められますし、継続研究については、旧年までの成果と今年の成果の区別と発展性の明示が求められます。
高等学校の部では、教科書学習からの疑問や一つのテーマをつきつめて探究している作品が多く、自然科学に対する生徒たちの強い興味関心がうかがえます。自分たちで装置を作製し丹念に実験し検証していく測定、また環境調査での地道なデータ収集と観察による考察などが多く見られました。結果の表現方法には工夫が必要ですし、仮説検証に直接的なデータをよく整理して示す必要があります。また、生物、水質などの環境調査では継続性が期待されています。
教職員の部では、生徒の理解を助けるための工夫された教具が出展され、努力がうかがえます。内容の更なる充実が望まれています。
身の回りの自然の事物・現象や、学校などで学習したことに対して、「おもしろい」、「なぜだろう」と強い興味や関心を持って、調べていく先には、確かな多くの感動と充足感があり、それが持続可能な探究心を生み出します。実験観察は当初の予想どおりいかないことの方が多いものです。それにどう挑戦するかが、児童生徒の科学的思考などを鍛えてくれます。科学的手法を発達段階に応じながら修得し、「みる−考える−わかる」のサイクルが、児童・生徒を成長させてくれます。そのような科学的経験の結果としてのすばらしい作品にまた出会えることを期待して、審査講評といたします。